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『psychA』続報その5――「疾風怒濤精神分析用語事典」について

戸山フロイト研究会です!

5回にわたってお送りしてきた戸山フロイト研究会誌『psychA』、個別の内容紹介はこれでいよいよ最後です。

最期を飾るのは巻末特集、「疾風怒濤精神分析用語事典」。それはいったい何なのか? ここでは執筆者による緒言を一挙公開しましょう!

 

 

特集「Pour lire LACAN」の一環として、ここに「疾風怒濤精神分析用語事典」を収録する。本事典の特徴は、ラカン精神分析において基礎的で、最低限必要不可欠とおもわれる用語に項目を絞り、また可能な限り短く簡明な記述を心掛けたことである。そしてまた理論的変遷に対する配慮も挙げられる。すなわちひとつの用語について記述する際に、それが各時期のラカン理論において有する意味と、その変遷を負うことを重要視した。
ラカン理論の導入の際にもっとも問題となるものの一つがこうした理論的変遷であり、理論の体系性を確保するため、筆者自体が各時期のラカン理論を編集し、ひとつの完結したシステムとして記述しているものも多い。こうした解説は簡明さをもたらすが、しかし読者がその後研究を進めていく際にはむしろ障壁となることも多い。なぜなら彼らは、もはやそうした解説書が与えてくれた視座では決して理解することのできないような理論に逢着するからだ。こうした状況に対し、本稿は事典という特質も活用し、全体的な体系性についてはあえて考慮しなかった。こうした統一された体系については、他の優秀な解説書が提供してくれるはずである。本事典はむしろ、そうした体系に穴をあけ、もう一人のラカン、異なるラカン理論に対峙するための断片の群れとして機能するはずである。

本稿は2014年7月5日に行われた戸山フロイト研究会シンポジウム「精神分析の諸対象」において頒布された「荒唐無稽精神分析事典」を全面的に改訂、改題したものである。シンポジウムに来た初学者の方に対して、ラカン精神分析の基礎的な知識を簡単に知っていただきたい、それも出来れば無味乾燥な情報ではなく、面白い読み物として提供したいという思いから、「荒唐無稽精神分析事典」は制作された。それと共に、自分のそれまでの精神分析についての勉強の結果をそこでアウトプットしたいという気持ちもあった。とはいえ締め切りの都合上執筆日数が限られていたので、大胆にも「荒唐無稽」と冠し、細部のいささか強引な整理や不正確な記述についてはある程度目を瞑ってもらおうと思い、また文体も多分に軽薄で諧謔的なものとした。まさしく機知の方法である。だがこうした態度は同時に、あまりに神秘的で勿体ぶったラカンの解説に対する対抗意識も含んでおり、簡略にできるところは可能な限り簡略に、具体的に言えるところは出来るだけ具体的に記述しようという、筆者自身の合衆国的合理主義もあった。

こうして完成した「荒唐無稽精神分析用語事典」は一部からは好評の声をいただき、是非来るべき会報誌に収録してほしいという要請も出された。本稿はこうした声に応えるものであるが、その際にすべての項目を再確認し、また70年代の概念を中心に、新たにいくつかの項目を付け加えた。更に原題に含まれていた時事的要素を鑑み、改題することにした。疾風怒濤とは、二晩の完徹で仕上げられた本稿の執筆過程である。そしてそれは、目まぐるしく変遷していくラカン理論そのものをも表していることだろう。

かくして元のテクストと比べて、本稿は大幅に改善されたと自負できるものとなった。しかしそれでも、制作の過程で思い知らされたのは、筆者自身の実力の限界であった。いくつかの重要概念(例えば、欲望のグラフやシェーマI、四つのディスクールなど)は収録できなかったし、不明確な記述しかできなかったためにやむを得ず削除した項目もある。改訂に際しては戸山フロイト研究会内で長時間に亘って議論を重ねたが、それでも解決されない問題は少なくなかった。こうした課題に関しては来るべき第2版、第3版で改善されることを願いたい。とりあえずこれが現在の私たちのベストである。

 

2011年11月 多田羅伴内

 

というわけで、30年代から70年代までの主要なラカン精神分析の概念が一望できる、大変お得な内容となっております。

 

ここで本編にも収録されていない目次を、特別にこのブログだけで公開しますよ!

 

愛/「言われたこと」と「言うこと」/『エクリ』/エディプス・コンプレクス/<女>なるものは存在しない/快原理/解釈/宮廷愛/鏡像段階強迫神経症/恐怖症/享楽/去勢/言語/現実界/言表と言表行為/サントーム/シェーマL/自我/自我理想と理想自我/ジジェク、スラヴォイ/シニフィアンシニフィエ、シニフィカシオン/自閉症自由連想法/主体/昇華/症状/象徴界/神経症/性関係はない/精神病/性別化の式/セミネール/想像界/想定された知の主体/疎外と分離/対象a/他者/父の名/超自我/抵抗/転移/同一化/倒錯/寝椅子/排除/パラノイアパロール/反復/ヒステリー/否定/否認/ファルス/不安/ファンタスム/フィンク、ブルース/フロイト、ジークムント/分析家/分析主体/法/ミレール、ジャック=アラン/無意識/無意識の形成物/〈もの〉/抑圧/欲動/欲求、要請、欲望/ラカン、ジャック/ララング/<私>

 

全70項目の大ボリュームです。実は冊子の約3分の1をこの事典が占めているという状況です。これでどうしてもわからなかった用語が理解できるようになるかもです。

興味があるワード等ございましたら、是非、当日手にとってご覧ください!

 

というわけで個別の内容紹介は終わりです。次回はついに、表紙と目次をすべて公開しちゃいます!

 

印刷も終わり、現在配送中の『psychA』は、11月24日(月・祝)第19回文学フリマで発売します。ブースは2階、カ-18です。みなさんお楽しみに!

 

 

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