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『psychA』続報その4――論文について

皆さまこんにちは。

来るべき戸山フロイト研究会誌『psychA』ですが、ついに本日午前11時を以って編集、入稿が完了しました! ついに完成です。後は文フリ当日を待つだけとなりました。

既にすべての情報が公開可能な状況ですが、楽しみは小出しにして、最後まで残しておきましょう。というわけで、今回は論文についてのお知らせです。

 

論文は会員によるものが3本収録されています。

片岡一竹による論文「主体と象徴界――セミネール2巻を読む」は、セミネール2巻『フロイト理論と精神分析技法における自我』を、ラカンの理論的変遷に位置付けながら読解したものです。ラカンの教育活動の中でも初期に位置するこのセミネールは、ラカン理論の黎明期とも言えるもので、一般的に知られているラカン理論には見出されない議論や、奇妙に思える記述も見受けられます。この論文はそうした点に注目し、特に60年代の理論の嚆矢となったセミネール7巻『精神分析の倫理』と対比的に読むことで、50年代前半のラカン理論について明らかにしようとします。例えば快原理の彼岸といえば、多くの人が〈もの〉から来る死の欲動の満足としての享楽を思い浮かべるでしょう。しかしセミネール2巻においては、象徴界こそが快原理の彼岸だと言われているのです。どういうことでしょうか? 詳しくは本編をご覧ください!

 

仁田抄人「『強化される』ためのCBT、『納得する』ための精神分析――認知行動療法精神分析の違い」は、第一線の認知行動療法を学びながら、ラカン精神分析に携わる執筆者が、第3世代の認知行動療法と呼ばれる最新の理論と、ラカン精神分析を比較しながら両者の棲み分けを訴えるものです。認知行動療法精神分析は犬猿の仲として知られ、お互いがお互いを痛烈に批判しています。しかしこの論文は、片方の立場から一方的に相手を批判するのではなく、むしろ両者を公平な視線で見つめながら理論的・思想的差異を剔抉しようとするものです。近年ラカン精神分析の論文においても認知行動療法が扱われるようになりましたが、これほどまでに認知行動療法について詳細に踏み入ったものは稀でしょう。最新の認知行動療法理論についての基礎的な知識も得られます!

 

倒錯は、神経症や精神病とともに主体の構造を決定するものですが、ラカン理論においては周縁的な位置に置かれてきました。しかし松山航平「享楽の様々の場――現代ラカン派における倒錯概念についての再確認」で述べられているように、現代のラカン派、特に国際ラカン協会の論者はむしろこの倒錯にこそ注目しています。本稿で主に扱われるのはジャン・ピエール・ルブランによって提唱された「ふつうの倒錯perversion ordinaire」とコレット・ソレルの「一般化倒錯perversion généralisée」という概念で、倒錯を主体の普遍的な享楽の体制として見なす議論です。特に前者は資本主義の発展と共に変質を被った現代的主体の機制として考えられており、ラカン派の議論においても極めてアクチュアルなものの一つであると言えるでしょう。本稿はこうした最新のラカン派の議論について、豊富な仏語文献を参照しながらまとめたものです。

 

論文も粒ぞろいであります。少しでも気になったものがあったら、是非文学フリマにお越しください!

 

次回は「疾風怒濤精神分析用語事典」についてお知らせします。

 

というわけついに完成した『psychA』は、11月24日(月・祝)第19回文学フリマで発売します。ブースは2階、カ-18です。みなさんお楽しみに!

 

 

これまでのお知らせ

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